陽射しだけは暖かい中、ぶらぶらと歩いてた。数日前からちょくちょく見かける彼に出会った。多分、神社の中でもちょくちょく見かけていたのと同じだと思う。あの時はほんとにびくびくしていて、人の姿を見るなりすぐに物陰に隠れていたけれど。今日はそうでもないみたい。でもやっぱりちょっとおびえてる。芝生にちょこんと座って、きっと気持ちいいんだろうな、と。ちょっとうらやましかったりする。色とか全然違うんだけど、何となく垂れ目の辺りがアインに似てる、とか思いつつも、ちょっとだけ立ち止まって、手を振ってみる。彼も僕を見てくれていた。それだけで嬉しくなって、でも、それだけで僕はその場を立ち去った。また、どうせ会えるだろうから。もっと近づければいいんだけどな。
夕方、最近はいつもこの時間に、西の空を探している。はっきりとわかっているわけではなかったけど、この時間帯にちょうど西に沈む月が見えるはずだったから。そう、新月を過ぎたばかりの細い月が。もうだんだんと陽の沈むのが遅くなって、次の新月の後にはもう見られないかもしれないから。
いつものように、建物を出て、自転車にまたがる。でも今日の光景はいつもと違った。目の前に月があったから。これこそまさに求めていたもの。月齢は多分2から3くらい。うっすらと夕に染まって、それでいてほとんど夜に支配された空に月全体の輪郭もくっきりと、それでいて細く輝く。あまりのことにすべてを忘れて立ち尽くす。今日はいい日だったと、今日もいい日だったと。また、こういう時に出会えることを祈りつつ、自転車をこぎだした。