家路につく前に練習場によった。もちろん練習をするため。オケの現役のみなさんは昨日くらいから演奏旅行やなにやらでほぼいなくなってしまったので、練習し放題な日々がしばらく続くから。し放題とはいっても、もちろん自分の集中力にも限界があるし、まあ2時間くらいはさらって帰ろうかな、とかそういうつもりで練習場によった。案の定、練習場は真っ暗で、いつもなら一番人がいそうな夕方であるのに対して、非日常性をあらわにしていた。もちろんこれは好都合。
いつものように楽器を出して、軽いウォーミングアップのあとに基礎練なんかをしてみたりする。ここまでは全くいつも通り。自分の出す音以外の音がないというのは、自分の音がきこえないからといって力んだりする危険もないけど、やっぱり下手くそなのがよく分かってそれはそれでわかってはいることだけどショックだったり。
基礎練を終え。これまたいつも通りソロの練習でもするか、と楽譜を取りに楽譜棚に向かう。ふと、そこにおいてあった楽譜袋に目が行った。それは僕の私物の入っている袋だったけど、中見はオケとは全く無関係にピアノの譜面をいれていたもの。そうか、今なら、なんの遠慮もなしにピアノが弾けるんだ。この練習場には一応ピアノがあって、そんなわけだから、この間実家に帰った時に、何冊かピアノの楽譜を選別してこちらに持ってきていたわけ。今までもここで弾いたことはあったけど、こんなに静かな環境なのは初めて。
袋の中の譜面を確認する。ショパンのノクターン、ムソルグスキーの展覧会の絵、バッハのゴールドベルク変奏曲、パッヘルベルのカノン、ドビュッシーの夢想、と映像(なんでこんなものまで・・・)。さてなにを弾こうかな・・・とりあえず、少なくとも昔は暗譜で弾けた唯一の曲、ショパンでも弾きますか、と譜面を広げる。うーん、懐かしいレッスンの痕跡がここに鮮明に残ってる。いつ練習していたのか記憶は定かじゃないけれど、確か中学生くらいだったような気がする。なんとなしに勝手に手は動いているんだけど、でも誤差がたくさん。調も何度も間違えてるし、和音もすごいことに。でも、すごいなっておもうのは、それでも、なんか勝手に手が動いてるから。音は間違ってはいるけど、曲の感じは完全に手が覚えてる。言葉にはならないけども、あえて言うとすれば、「ああ、いい感じ」。ちょっとピアノを習っていたころを懐古したり。
結局、そのあとはゴールドベルクのアリアや、展覧会の絵のキエフなんかをちょこちょこっと記憶を頼りに弾いてみたりして、今いい機会だから、他にも譜面を持っていこうとか、そういう計画を立ててみた。とりあえず、ベートーヴェンかなあ。悲愴とか月光とか。(もちろんゆっくりな楽章だけだけ。それ以外を弾いてもいらいらしそうだし)