僕が犬好きなのは今さらいうまでもないことなんですが、まあ、犬好きといってもいろいろとあるんだと思いますけども、僕の場合は、ほんとに、単に、犬が好きなんですよ。犬種も問わないし、もちろん飼い犬だろうが、野良犬だろうが、とにかく犬であるならば好きなのです。たいがい、ほとんどの犬はどんな様相だろうと「可愛い」って思ってしまいますし、そうでない場合は、主には連れ立っている飼い主の雰囲気が(僕にとっては)よくないせいですね。
そんなわけで、すれ違ったら思わず(犬に)挨拶とかしているわけですが、まあ、相手にされることってそんなにあるわけじゃない。残念ながら。ま、それはどうでもいいとしまして、うちの近所に、去年からずっと、ほとんど毎日のように顔を合わせるにもかかわらず、まったく人間を寄せ付けない野良犬がいます。これは僕に限らず、いかなる人間も彼の半径1メートル以内に近づいたのを見たことがありません。もっとも、彼に近づいている人間も僕以外に見たことないんですが、近づこうという意志がなくても、彼の視界に誰かが入ってきた瞬間に、彼はもうその場を立ち去っていることが多いのですよ。そう、ものすごく怯えているよう。
その割には、いつも同じ辺りに生息してるし、たまに大学の構内でもみかけます。でも、行動パターンはいつもといっしょ。絶対誰にも近づかない、誰も近づけない。一応、目を合わせてくれたりはするんですよ。よく見つめあってることもあるんですが、それでも一歩踏み出せば、さっと後ずさり。
この2年弱、なんとか友達になれたらなあ、とか思っていたものの、うまくはいきそうもない。わけですが、そんなことよりも、いったいなにが彼にそんな恐怖心を持たせる原因だったんだろう、と思うとかなり胸が痛みます。人間ってそんなに残虐な、危険な生き物っていうわけでもないんだよ、と、みんながみんな君を傷つけようと思っているわけじゃないんだよ、と。ま、こんなのって、いわば偽善みたいなもんだけど。
今日の昼間、なにげに今までの中では一番近づいたような、とか思ったり、なんだか足の調子が悪いような、とか思ったり、いつもながらにどことなく悲しげな彼の目を見ていると、いろんな想いが駆け巡りますねえ。