「プロコフィエフ短編集」を読みました

ご存知作曲家のプロコフィエフさん、に関する短編集ではなくて、プロコフィエフ本人が書いた短編集です。作曲や演奏だけじゃなくて物語も書くのですか、と。

イメージとしては、欧米作家の近代の短編と雰囲気近いかなあ、という感じ。まあ、そういう時代の人なのでそりゃそうだってことですが。

音楽に関する話はほぼなくて、というか1話だけ楽器が出てくるんですが、この先どうなるか?って思った矢先に「未完」という悲しい結末(ネタバレごめんなさい)

あとは子どもが主人公だったり、ちょっと恋愛モノっぽかったり、ひたすら不思議な世界だったり、おっさんがだべってたり、そんな小説たちがつまってました。

後半には、日本滞在中の日記も載っていてこれも結構面白い。日本滞在中に多くの短編を書いていたようで(作曲はほとんどしていない)それについての記述がちょうど「さっき読んでたやつここで書いたんや」ってなったり、ほかにも日本のクラシック聴衆についての辛辣なコメントがあったり、金策や芸者の話などなど人間味あふれる感じ。

京都奈良方面に来られていたのは何となく知っていたんですが、読んでいるとなにやら京都観光で『トンネルを備えた水路を舟で巡った』らしく「これって琵琶湖疎水やん!」ってなったのがこの本で一番のハイライト。いやあ急に親近感わいてきましたねえ。

最終的にアメリカに渡っていくんですが、タイミングによっては日本で作曲の依頼を受けていたかもしれない瞬間があって、こういうのも縁だなあ、と。

ちなみに、今プロコフィエフの交響曲に挑んでいるわけでして、だからこそこれを手に取ってみたのですが、小説を読むことで演奏になにかいい影響をっていう雰囲気はそんなにないんですけれど、この人は音楽も物語なのかなっていうぼんやり思っていたこと(言われていたこと)を改めて感じたというか、そういう次第です。日記で人柄も何となくわかったし、イメージ大事ですからね。

プロコの音楽に触れたことのある人は(そうでない人も)一度は手に取ってみるといいかもしれません。作曲家の書いた小説ってあまりなさそうだし、日記だけでも面白いけど、小説のほうもぜひどうぞ。

さて次はどちらに行くかな。(そういや、日記にドビュッシーについての言及もありましたね)

「三体0 球状閃電」を読みました

あの三体シリーズの前日譚?ということで早速。

実際のところ、原作の発売順としてはこっちのほうが先だったらしいですが、日本での発売が三体シリーズのあとになったこともあって「三体」というタイトルは日本語版だけのものだそうで、という関係。当時からどこまでシリーズとしての構想があったのかはわかりませんが、登場人物は少しかぶってる。というか、後書きを参考に三体本編のページをめくったら、確かにこの「球状閃電」での話題でてましたわ。なるほど。

SFの想像力はすごい。マクロな量子力学とは。リアル?シュレディンガーですよ。

単に宇宙に行ってドーン、とか、宇宙戦争が、っていうんじゃなくて、今回は完全に地上だけの話。戦争絡みなので、そこはちょっといろいろ思うところはあるけれど(日本ではこういう舞台設定にはならなそうとか)、それはそれとして。

いつもながら登場人物の名前を把握するのに多少手間取ったりしますが、まあでもそんなに主要キャストが多いわけじゃないから、中盤以降になってくるとだいたい大丈夫。

いろんな伏線が絡み合いつつも、理論物理系なSF話。三体を読んだ人にはぜひどうぞ。読んでない人もここから三体に進んでもいいかもですね。

「そして、よみがえる世界。」を読みました

アガサクリスティー賞ってことで手に取ってみました(といいつつ、Kindleまとめ買いキャンペーンの最後の1冊が見つからなくて、という事情もあったりなかったりでしたが

ひさしぶりに小説を読んだ気が・・・いやいやラノベは結構読んでたわ、あれ?ラノベとそれ以外の違いってなに?ってそんなこと思いつつ。というのも、VR、MR、メタバース、電脳技術的ななにか、という近未来SFで、要素的にはわりと自分に物語としてなじみのあるモノが多かったので読みやすかったですね。

前半は世界観の構築に時間がかけられていたので「事件おこるのかな?」とか思ってて、子に「なに読んでるの?」って聞かれた時も「近未来SFのミステリー、まだ事件起きてないけれどw」みたいな返しをしていましたが、その数分後に事件起きましたね。ちゃんと。

裏事情が明らかになってくるところは、ほほーなるほどー伏線回収きたなーみたいなわくわく感ありつつ(猟奇的な側面もあったけど)、でもこれじゃ終わらんよね?あれはまだ回収されてないよね?ってところからラストスパート!

ちなみに、電脳技術的なやつで自分の支配下にあるロボットに自分を介護させるっていうアイディア(これは冒頭に出てくる話なのでネタバレとかじゃなく)は新鮮でした。自分自身を機械化して置き換える、ってことまではしないあたりが地続きの未来感、かな、とか。

受賞作ってことでそれなりに若い作品ですが、400ページ弱で、あっという間に読み切れてしまうので、一度手に取ってみるのもいいかもしれません。

『問題解決のための「アルゴリズム×数学」が基礎からしっかり身につく本』を読みました

「読みました」と書いたものの、途中の問題は一切問いてないし、サンプルコードもざーっと見ただけなんで「目を通しました」が正確ですけれど(汗

問題解決の手法、考え方を、図解で、カラーで丁寧に解説してくれています。なんかわかった気になる。と思う多分。(夜に読んでいると、数学的考察とか、たまに意識がとびそうだったけど)

自分のことでいうと、もともとそんなに量の多い計算をするわけではありませんが、にしても最近は特に計算リソースも豊富になってきたし、既存のライブラリも充実しているし、いわゆる「富豪プログラミング」的な感じでコードを書いている気がする日々です。(組込でCとかをべたべたに書いていた時はもう少し違った、と思う)

もちろんそれがいい悪いじゃないけれど、なにかボトルネックになる計算に出くわした時に、それを自分の手で改善する必要が出てきた時に、こういうところに立ち戻って、問題を分割し、最適な解をみつけることも大事だなと思った次第。

その意味では、3〜4章にあるような各アルゴリズムの解説はもちろんですが、5章の考え方、というのが一番役に立ちそうな気がしました。

(余談ですが、これ、現役大学生が書いた本なのよね。すげーな、ほんまに)

「心理的安全性のつくりかた」を読みました

ここのところ耳にする機会が多くなった気のする「心理的安全性」、チームで気兼ねなく意見の言い合えるそういう環境、そんな話にちょっと触れてみました。

っていっても、ひとり会社で基本ひとりで仕事をしているわけで「チーム?」という感じですけれど、まあそれはそれとして。

こういうチームビルディング的な話って、別にビジネスに関係するものだけじゃなくて、たとえば趣味の集まりとか、近所付き合いとか、家族とか、そんな間柄でも参考になることはいっぱいありますよね。っていうのがこの手の本を読んでいてよく思うこと。もちろん、ビジネスの話全部をプライベートにもってくる必要はないのですけれど、考え方として参考になることは多い。

たまにはちゃんと感想を書いておこうと思ったのだけれど、紙の本にマーキングする人じゃないから、そこそこ時間かけて読んでいると、それなりに最初の方のことを忘れているよね、、、と。こういう時、電子だともっと気軽に印がつけられるのかもしれない。でもマンガ以外は電子よりは紙で読みたい派なんだよなあ、と。(次からはせめて付箋でもしておくか

というわけで、気になったワード(自分なりの解釈含む)を並べておくことにします。書くことで多少は振り返れるはず>自分が。

  • 罰でものごとは改善しない
  • 自分もちゃんと当事者になる
  • 精神(論)では人は変わらない。実際の行動大事
  • トラブル時には「ちょーどよかった」
  • 思考と現実が違うことを認識
  • きっかけとみかえりを分析
  • 理由つきの感謝大事

こうやって書いていくと、チームビルディングの話というより、行動分析ってことなのかな。自他の行動をちゃんと分析して、そしておたがいが気兼ねなくコミュニケーションをとりあえるような場を形成していくってことか。

自分が実践できるかもなかなかむずかしそうな気もするので、実際に動いているチームで導入していくのはそれなりにハードルはありそうだけれど、効果ももちろんありそう。今は心に留めつつ、人とのコミュニケーションがとれていけたらいいな。(コミュニケーション苦手ですけども・・・

「同志少女よ、敵を撃て」を読みました

いやもうほんとにおもしろかった。

アガサ・クリスティー賞受賞作。しかも、史上初の選考委員全員が最高点ってことで話題になっていたのでふと手に取ってみました。(めずらしくミーハー、きっとクリスティーの名前に惹かれた)

クリスティー賞といってもミステリーとは関係なく、戦争物。第二次大戦、ロシア、タイトルのように女性の狙撃手の話。それだけでなんかつらい話だなあと想像できてしまうわけですが、せっかく手に取ったので読み進めてみます・・・と思ったら、ページをめくる手が止まらない。

女性兵士を題材にした話といえばちょっと前に「戦争は女の顔をしていない」が漫画化されて話題になっていた気がしますが、やっぱりつらそうだったのでそちらには手が伸びてませんでした。のに、本作に手が伸びたのはきっと絵がないから。想像だけの方がつらくないこともある、多分。

狩に行って帰ってきたら敵兵に村が襲われていて、生き残った少女が狙撃手として復讐を、という話。戦果を上げつつ、戦争はどんどん進み、ハッピーエンドになんかなるわけない、と最悪の事態を念頭に置きつつ、終盤へ・・・(続きは本文をどうぞ)

戦争はつらいよ、ほんとに。もちろん、実体験はないけれど。まさに悪魔に魅せられて。でもみんなが自分の正義のために、自分の信念のために突き進んだ結果、こうなってしまったのかと複雑な思い。

とても満足度の高い一冊でした。たまには賞をとったり、大々的に宣伝されている本を読んでみるのもいいですね。

なんでこんなに読みやすかったんだろうと思った時に、そういえば日本人作家の作品を読むのがひさしぶりだった、というのがもしかしたら関係あったりなかったり。単に相性だけの話かもしれませんけれど。

さらに余談ですが、戦争物、特に世界大戦関連ってほぼ読んだことない気がしますが、ちょっとしたミリタリー系の予備知識が、ガルパンや幼女戦記によって脳内補完されてるなと思った今日この頃でした。

「夏の夜の夢」を読みました

ふと最近本(物語)を読んでないなって思って、そういえばと手に取ったのがこれ。(最近は「真夏」ではなく「夏」とするのも多いみたいですね。midsummer=夏至で「真夏」ではないので)

シェイクスピアをちゃんと読むのは初めてな気がする(ロメオとジュリエットはいろんな形で読んだり観たりした気がしますが、それはそれとして)

劇なのでもちろん文章は全部セリフ。自分で登場人物の動き含めて情景を全部丸ごと想像しながら、というのも一興ですね。そのせいで登場人物になかなか思い入れが出てこなくて、最初のうちは誰が誰だか全然覚えられなかったけれども。

恋愛事情の絡み合った男女2組(+1組)が暗い森の中をうろうろして、そこに惚れ薬というアイテムが出てくれば、それはもうドタバタ喜劇の始まりですね。もともと全然ストーリー知らなかったけれど、途中から「ああ、これはこうくるな」みたいな感じになってきました。最後はみんなハッピーでよかったよかった。

今回読んだ訳書は電子でしか手に入りにくそうだったので、Kindle版で読みました。こういうのは文庫で読んだほうが、、、とは思っていたのですけどね。

でも、Kindleでよかったです。というのも文章中にたくさんある脚注がその場で解決できる(タップしたらすぐに読める)のすごい便利だった。この勢いで上述のように登場人物リストがいつでも表示できる、とかあったらいいんだけどな。(関係ないけど iPad mini 6thでの読書体験がよすぎる)

そんなに長い話でもないのでわりかしさくっと読めたし、たまにはこういうものよいですね。

ちなみに、なんでいきなりシェイクスピア?っていうのはまたそのうち。ってもったいぶるほどのことじゃないんだけれど。

「伝わるデザインの基本」を読みました

あまり資料を作ることはないんですけれど、気になった本を手に取ってみた。

増補改訂3版ということでパワーアップしているらしいです。これしか読んでいないので違いはわかりませんが。

ノンデザイナーズ・デザインブックのさらに実践より、資料作成用って感じでしょうか。

実践的なことがベースになっていて、基本的にOfficeでやれることを、っていうスタンスみたいですが、ことごとくOfficeのデフォルト設定が無視されていて(というか「デフォルトのままでは使わないほうがいいです」みたいにいわれていて)、それがいちいちニヤニヤしてしまう。

なんとなくやっていたことが、まあそれっぽい感じになっていたり、実は全然逆効果だったり、そういう気付きもたくさんありました。

とはいえ、上述のように、普段ほとんど資料とか作る人じゃないのですけれど、勉強会のスライドとか音楽関連のちょっとした印刷物とか、そういうの作る機会があれば、思い出したい。というか、再び手に取ろう、と。

全体として読みやすいですが、Before – Afterを眺めているだけでも役に立ちそうな気がするし、なんか、あらゆる人が読んでも損はないのではないかと。学校の先生とか、読んでほしいなあ。

「Real World HTTP」を読みました

自分の本業はアプリ屋さんですが、そうはいってもWebの世界と無縁なわけもなく日々サーバにリクエストするコードを書いている今日この頃でして、そんなこんなでふと教えてもらったこの本を手に取ってざっくり読んでみました。

ちなみにGoは無知なのでGoによる実装パートは飛ばしまして、副題「歴史とコードに学ぶ〜」のうち「コード」のほうは手付かずです。

前半のHTTP/1.1までのくだりでは、あーこれはこういう意味だったのかとか、ここで昔苦労したよなあ、とかそんな感じでしたし、後半では最近よく聞くワード(第2版は2020/4発売なのでわりと最近の話題もカバーしている)はこういうことだったのかと、なんとなく雰囲気わかったかなあ、と。

なにしろ自分でサーバ側の実装をおこなうことはほとんど無いですが、それでも、自社/他社のいろんなサーバにアクセスするのは日常茶飯事なので、これはなにが起こってるの?とか仕様がよくわからない?っていう時にリファレンスとしても使えそう。

そんなわけで、私と同じようにクライアント側の人も目を通すといろいろと役に立つかもしれませんね。

 

直接は関係ないけれど、巷をにぎわせていたHTML5って、もう廃止されてたんですね。知らなかった。

どうしてHTML5が廃止されたのか | フューチャー技術ブログ(2021.6.21)

「三体 III 死神永生」を読みました

待ちに待った最終巻。予約購入して、先週のオケ本番終わってからじっくりと読みました。

今回は前作を読み直して、IIIが発売されるまでに準備万端。

 

IIの時にもうこれでほぼ終わりじゃないの?っていう気分すらあったのに、それが完全に吹き飛ぶこの最終巻。どこまで読み進めていってもまったく先の展開が読めません。まじか、まじか、まじか、の連続。

いやあ、ほんとにおもしろかった。

ここ最近ずーっと三体読んでたので、子に「それどんな話なん?」ときかれて「宇宙人が攻めてくる話」ってざっくり答えていたけれど、そんなどころの話じゃ全然無かったよ。

想像力は無限ですね。ほんますごいわ。

ちょっと気持ち落ち着いてから、もう一回最終巻は読み直しましょうかね。

SF好きな人もそうでない人も是非オススメ。今はIとIIがKindle半額やってるみたいですよ(私は単行本ですが)

 

読んでる途中のメモ的ブログ。

三体 第一部 – itokの日記(2021.5.13)
三体 第二部 – itokの日記(2021.5.18)
三体 III 上巻 – itokの日記(2021.6.2)
三体 III 下巻 – itokの日記(2021.6.4)