「グスタフ・マーラーの思い出」を読みました

11月の演奏会に向けて滑り込みで。

絶版なんですよね。なのでネットで古本屋さんを巡ってようやく入手。状態もいかにも古本(古書)って感じでしたが、それはそれとして。

作曲家に関しては、伝記とか自叙伝とか、こういう系統の本はほとんど読んでなかった(いつも読んでるのは評伝という感じのジャンル)んですが、この人(ナターリエさん)のはすごくよかった。自分の話はほとんどせずに、良くも悪くも淡々とマーラーの様子や言動を日記として書き残して、それがこの手元にあるわけで。

マーラー本人の言葉をできる限り正確に残してきたということを前提とするなら、いろんな答えが普通にたくさん転がってました。

もしなにか意味のあることを言うのであれば、すべては過剰なほどに豊富に存在しなくてはならないし、ひっきりなしに湧き出てこなくてはいけないんだよ

これ冒頭10ページで出会って、あーだからあの音の洪水か、と。

彼は、ゆっくり演奏してほしいところには、彼をはじめ皆がきまってやるように「リタルダンド」ではなく「急がずに(ニヒト・アイレン)」と記し、逆に次第に速くしたいところには、ただ「ひきずらぬように(ニヒト・シュレッペン)」とだけ書いた、ということだ。

はい、完全に正解ここにありましたー!ってね。

ほかにも、いわゆるベートーヴェンやシューマンの演奏時に編成に手を加えたこととかそのあたりの事情もあったり、それだけでなく、当時はこれだけ頻繁にいろんな演奏があったんだなあとか、曲が出版されないということはつまり総譜のオリジナルのバックアップができないという事情だったり、今まで読んできた評伝では知りえない生の声みたいなのを垣間見た気がして新鮮でした。

マーラーの指揮はどうだったんでしょうね。今見てもすごいのかな、今だとわりと普通なのかな、どうかな、というそんな妄想も。

どっちにしても、作曲家がほかの作曲家の曲を指揮するというのは胸中うごめくものがあったんだなあ、と。

時代的には交響曲第4番の演奏まで、ということで、残念ながら5番の話はちょっとだけ作曲中の3楽章のくだりが出てくるくらいなんですが、4番も演奏経験ありなのでそこはふむふむと読めたり、逆に2番とか3番の話はふーん(いつか演奏する機会があれば)となったり。

んで、これらの日記の最後が

マーラーは六週間前にアルマ・シントラーと婚約した。

からはじまる一節で終わってるのもなかなか印象的で、なんにしてもこれが絶版なのがほんとにもったいないです。アルマさんのは読んだことないけれど、少なくとも交響曲第4番まではこちらが詳しいですからねえ。

少しだけ近づけた気もしますし、また楽譜に向かった時の印象も変わるかも。気持ちの問題ですけどね。

何度も書いてますように絶版ゆえに残念ながら広くオススメはできないんですが、もしなにかの縁で手に取れる機会があれば是非。