小望月

 駅に降り立った僕が最初にしたことは、東の空を見渡すこと。今日、この場所に立つ時間は昨日よりは若干早い、そして、ご存知のように、月の出る時刻は満月に向けて考えれば、日に日に遅くなる。つまり、昨日の同じ状況下より、明らかに月は低い位置に見えている、ということを考えながら。
 どことなく気持ちが焦っていたのは気のせいなんかじゃなくて、それは、早朝に降っていた雨のせい。家を出る時に一瞬だけ降り込んだ雨のせい。昨日までとはうって違って青空を隠してしまった多くの雲たちのせい。
 それでもどこかから光はきっともれるはず。そんな思いで空を見渡すことしばらく。探索が数回目に達した時、その切れ間を発見。まさにその時、そこから光が漏れ出した。数秒だったのか、数十秒だったのかはわからないけれど、ただそのもれ出る光に魅了されて、そして、少しずつ姿を現す貴女に魅了されて。もうほとんど丸い。

 Jazzを背景に、グラス片手にこれを書いている今現在、貴女は見えたり見えなかったり。そのなんともいえない微妙さがますます見たいっていう欲求を刺激します。たまにものすごい朧月だったりするけれど。なんにせよ、明日、ですか、ね。