大塚国際美術館

 なにかといえば、要するに世界中の名画の複製を集めて展示しているだけの美術館で、はたしてこれを美術館といっていいのか、ということに関してはいろんな議論もあるみたいですが、まあそこらへんの話はさておいて。
 確かに、普段は本とか、テレビの画面の中でしか見られないようなものが、実物大で目の前にあるというのは、たとえそれがレプリカであっても、価値のあるものであろう、とは思えるわけで、実際そう思って、絵の前に立ってみたのですが、でもやっぱり違うんですよね。絵にもよりますが、所詮はただの写真にしか過ぎないものたくさんありました。つまりは、な~んも、心に響くものがないんですよ。生で聴く音楽と録音との違い、というよりはそれ以上の違い、人間が演奏する音楽と機械が演奏する音楽の違い、みたいな違いですね。本物を直に見た事があるものなんかは、ほんとに全然違った。
 そうそう、絵っていうのは静的な芸術であるから、ゆっくりと自分の時間で、その作品と対話する事ができるんですよ。それが音楽のような動的な芸術との大きな差。音楽は聴衆の時間ではなくて、奏者の時間ですべてが過ぎ去っていくから。なんですが、このレプリカはなかなか対話が難しいんですよ。レプリカだから。
 そういうわけで、館内をまわりはじめた段階で、そのいつもやっている対話というものは諦めて、いろんな物を実物大で感じ取る、ということに専念する事にしました。新たなお気に入りを探して、という感じで。いくつか見つけましたよ、お気に入り。いつものことながら、比較的マイナーな作品でしたが。本物を見てみたいですね。(でもイギリスだけど・・・)
 昔の礼拝堂とかもありまして、ものによってはやっぱりレプリカ風味が満載のちっとも心動かないものもあったんですが、え?なんで?って単なる写真(ほんとは全部陶板、というものです)が壁や天井の前面を覆っているだけなはずなのに、妙にどきどきするようなものもありました。あれは凄かったなあ。あれが礼拝堂の持つ力なんでしょうか。本物だったら、どうなることやら・・・

 まあ、そんな感じだったわけですが、ちょっと、行き道のフェリーからの景色なんかも写真に撮ったので、週末には掲載するかもしれません。