『「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた』を読みました

Newton特集オススメの本を読んでみる企画はこれでひと段落。

「ネコひねり問題」っていうのはあれですね、ネコは落下する時に必ず足から着地するというやつです。その話で500ページ弱もあるわけですが、それだけを話題にしているわけではなく、ネコひねり問題をキーとした科学技術史の本という感じでしょうか。

落下状況を確認するには写真などに収める必要がありますよね、ってことで写真技術の歴史といった具合。ほかにも脳や神経/筋肉といった生物系の話もありつつ、もちろん落下といえば物理なので、ニュートン力学から相対論を経由して量子論、宇宙物理学まで話は進んでいきます。

ひねりを再現するという意味ではシミュレーションするための計算機(コンピュータ)からロボットまで。宇宙飛行士が無重力化でどうやって体勢を変えるか、なんていう話も。

これらすべてがネコにつながっているというわけなのでネコは奥が深い。

最後には科学者とネコっていうことで、論文の共著者となったネコのエピソードなど、ネコ三昧の一冊です。ハッブル望遠鏡のハッブルさんの飼い猫の名前がコペルニクスだったのは思わずニヤニヤしちゃいますね、

物理学は物事を単純に記述できることを目指すっていうのはなるほど確かにそうだった。だけど、ネコひねりはたった1つの解を持つわけじゃなくて、複数解の合わせ技っぽい雰囲気。

ちなみに自分はどちらかといえばイヌ派ですけれど、それはさておきおもしろい一冊でした。

「ビジネス教養としての気象学」を読みました

Newtown特集オススメの本、第2弾。今回も気象関係の本ということで。

空とか雲とかという目に見えやすい話でもなく、数式が出てくることもなく、そういう感じの気象の本。天気の基礎から、どうやってデータを観測・収集しているのか、そのデータをどう使って予報をおこなっているのか、そういった自分たちに天気・気象情報が届くまでの裏側の話、という感じでしょうか。

自分自身、天気予報系のアプリなどいくつも手がけておりますので、馴染みのある気象データもたくさん出てくるんですけれど、あれはこうやって作られていたのか、みたいなそういう発見があってなかなかおもしろい。

純粋に開発のネタもちらほらあったようななかったような。

予報は結局のところ確率だけれど、その確率をどうやって伝えるのかが難しい、とあって、確かにそれはそうだな、と。降水確率って、今でも普通に伝わりにくいことありますよね。100%だからといってめっちゃ降るわけじゃないし、言わば必ずちょっと(1mm)は降る、ってことですし。

異常気象、地球温暖化、そして防災、どれもこれも気になる避けられないキーワードばかりですが、その取っ掛かりをつかみつつ、ほんと予報業務って大変だなあ、と。

まあ、ただ、やっぱり天気ってものすごく身近なものですし、だから10数年前にアプリを作ろうと思ったのもありますし、こういう本を通してみんなにとってももっと身近になるといいなと思った今日この頃でした。

(なんか、先日の本とブログの結びがあまり変わらない気がするけれど気にしないし、宣伝もしておく> そら案内 | ホーム

「音楽家の伝記 はじめに読む1冊 メンデルスゾーン」を読みました

ようやく読みましたメンデルスゾーン。

いつも読んでる音友の評伝じゃないのは、音友のいつものシリーズからはメンデルスゾーンの本でてないんですよね、と。んで、それっぽい本とかもあまりなくて、というかメンデルスゾーン関連の本がほぼなくて、そんなわけでここにたどりつきました。今回は伝記で。

子どもでも読めるというスタンスなのでかなり読みやすかったです。おかげで1週間くらいで読んじゃった。

さて、メンデルスゾーン、お金持ちの坊ちゃんで天才音楽家、みたいなイメージでしたけれど、もうなんていうかね、父親は大手私立銀行の設立者で18000坪の邸宅持ち、容姿端麗、教養も知識もあって真面目、絵も上手だし、そして音楽は天才的。という、そんな主人公、ラノベにもいないっすよ。もしかして転生者か?みたいな。

いろんな天才エピソード満載なので、それは実際に読んでいただくとして、他の作曲家みたいなダメ人間っぷりとか生活に困ってとかそういうのがないのでそういう意味ではかなり新鮮。あまりやきもきせずに読めたかなあ。まあ、ただ、38歳の若さでこの世を去ってしまったので、それはつらい話。もうこれは過労でしょ。真面目人間がんばりすぎ。

あと、ユダヤ人的な話があって死後1世紀ほど封印されたかのようになっていたので、そのあたりはちょっと不憫です。

そういや、ここにも出てきましたね、ベルリオーズ。ほんとこの時代のどの作曲家の話にも出てきますね。

今現在、超初期の作品と向き合っているところですけれど、これをちょっとしたスパイスにできたらいいなあ。(ちなみに、スコットランドとか真夏をやった時にこれを読んでいればなあ、とかそういうのはよくある話で)

結構読みやすかったということもありまして、すでに音友の評伝を読んだ作曲家でも、次に出会った時はこちらの伝記に目を通してもいいかもね、と。

「読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし」を読みました

毎月購読しているNewtonの最新号で、いろんな科学系の書籍を紹介する特集が組まれていたんですが、その中でお薦めされていた本。

もちろん、自分は空のことには大変興味がある人ですし、荒木さんの本は読んだことがなかったのでこれを機に、と。

気象学系の専門書に書いてあるようなことをかみ砕いて説明されていたり(そのおかげで専門書で挫折した身としても読みやすかった)、いつの間にか空と雲に興味を持った子との会話に出てくるような雲や虹の話があったり、空を見上げたり雲を眺めたりするの好きな人はとりあえず読んだら?って感じですね。

SNS絡みの話もちょいちょい出てくるのが今風で。科学的アプローチの啓蒙みたいなものちらほらとね。

自分で予報をするわけじゃないけれど、天気予報のアプリとか開発している身としては、レーダーの話とか生の配信データを見てたりするので「そうそう、そうよねえ」みたいなこともあったりして、そういうちょっと違った楽しみ方もできました。

すぐにすべてを知識の糧として使えるわけじゃないけれど、ちょっとくらいは空の見え方が変わったかな、と、冬空を見上げながら思う今日この頃です。

こういう本をきっかけにみんなが空を眺めるようになるといいなあ。(そして、天気予報にもっと興味を持って、アプリを使ってくれたらいいなあ。宣伝w> そら案内 | ホーム

「可能性にアクセスするパフォーマンス医学」を読みました

今年一冊目、といいつつ去年末ごろからのんびり読んでいたけれど、積ん読たまってきたので一気に読み終えたという感じで。

当然ながら別に格闘系でもなければ、そもそもスポーツもほぼしない人なんですけれど、ちょっとタイムラインに流れてきて自分の体を使うっていうことに興味があったので、と。まあ一応趣味で楽器を弾いたりしていますしね。

イメージ大事。脳がどう認識しているのかとか、筋肉がどう動くのかとか、骨がどうつながっているのかとか、そんな医学的な難しい話はさておいても、ちょっと意識するだけで変わることもあるんだろうな。

もう最近は全然やってないけれどボルダリングやってる頃に読んだらまた壁ののぼり方が変わったかもしれないとかそんなことを思いつつ、今はとりあえずいい感じに応用できないかって意識しながら演奏していきたいところです。

「シベリウス (作曲家・人と作品シリーズ)」を読みました

作曲家シリーズもこれでひと段落。自オケの今シーズンで弾く作曲家は全部読んだことになりますね。

今まで読んできた中では比較的最近の作曲家シベリウスさん。「フィンランディア」作ったしフィンランドの人よね?くらいの認識でしたが、あのあたりはほんとに歴史的にいろいろと複雑な事情があるようで。

まあ、どの作曲家も18〜20世紀くらいなので社会的には激しく動いているタイミングもありますし、世界史で習うような出来事が普通に作曲の横で起きてるみたいなこともありますよね。

さて、シベリウスさん、お酒あり、タバコあり、作曲するために家族と別居してみたり、そんな感じのわりとありがちなパターンだよねえ、と。奥さん一筋だったのがまだましか、とか。やっぱりお金がなくて困ってるっていうところですが、このくらいの時代になってくると著作権の概念も生まれてきたようで、演奏されることで得られる収入もあったっぽいですね。

交響曲、そういえば2番3番は弾いたことある(1番もよく演奏される)けれど、3番もすぐには口ずさめないなあ、と思って3番以降をもう一度聞き直してみました。

3番、こんな曲だった。今思えばまだ普通にわかりやすい部類だし、かっこいい
4番、確かに難解・・・当時これは大変そう
5番、かっこいい〜いつかやりたい
6番、きれいですね
7番、こっちもきれい、これもいつかやりたい

もちろん個人の感想ですが、4番を聴くと他のはまだなんとなくすんなり入ってきそうな気がしました。気のせいかもだけど。

流行に流されることなくとにかく自分の音楽を追求したシベリウスさん。8番が有耶無耶に無くなってしまった(全部燃やしたのでは、という話)のはほんとに残念ですね。でも本人が納得いかなかったら仕方ないかあ。

さてこれでひと段落なので次はどのジャンルを読もうかな。

「ベートーヴェン (作曲家・人と作品シリーズ)」を読みました

先日のチャイコフスキーに続いて、今度はベートーヴェンを。

ベートーヴェン – 音楽之友社

思えば、ベートーヴェンだけは子どものころになんか伝記とか読んだ記憶ありますよね。あと、マンガでかかれた世界の偉人みたいなのも何度も読んだ気がする。なので、いくつかのエピソードはなんとなく頭に残ってるし、そんな感じでこの本を手に取りました。

といっても300ページほどの本のうち評伝的なのは200ページであとは曲解説なので、200ページではエピソードは全部は語れない、というか、そういえばこの話はなかったな、ということもあったり(ということに読んだ後に気付いた)

作曲家の話はほんと最終的にはお金の話になっていくところもあって、やっぱり大変だなあという身もふたもない感想を持ってしまうわけですけれど、パトロン何人も抱えていい感じにスタートしたと思いきや、だんだんそれもうまくいかなくて出版社に前借りするみたいな話になるんですよね。自分で演奏会企画してももうからない、とかね。場所代と演奏家への支払いをしてしまうと、作曲者にはあまり残らないというつらい話。

色恋沙汰的あものはあまり触れられていなかったけれど、その一方で甥っ子に対しては一悶着どころかいろいろあったみたいでそのへん子育てって難しい。

ちなみに、今度交響曲5番をやるんですが(「運命」と名のついたそもそものエピソードが眉唾扱いなので、できれば番号表記で会話したいけれど「うんめい」の略称が便利すぎて・・・)5〜6番を作曲した頃のエピソードはそんなに書かれてなくて、、、ほかの曲に比べたらそれほどのことはなにもなかったのか紙面の都合なのか、どっちなんだろな。

後半の曲解説に交響曲にたいしてはハイドンやモーツァルトと違ってもっと慎重に作ってたみたいな話があったけれど、その後のブラームスさんはさらに慎重だったよねえ、とかそんな時代の移り変わりを感じながら。

よーし、これで初めての5番にもう一度向かい合っていきましょうか。5番はなんやかんやで初物尽くし(チェロバスが分離したり、トロンボーン・ピッコロ・コンファゴが入ったり)ですからね、楽しみですね。

「チャイコフスキー (作曲家・人と作品シリーズ)」を読みました

今シーズンは偶然にも全部評伝がでているので、順番に読んでいかねばと。で、最初は先日読んだロメジュリつながりでチャイコフスキーさんから。

チャイコフスキー – 音楽之友社

管弦楽曲にはそれなりになじみもあるので、そのせいで多少は知っていることもちらほらと。「男友達」の話は有名ですしね。

作曲家はいつもお金に困ってそうで、作った音楽は出版社に売りきりですし、職業作曲家ともなると確かに大変。(このへん、著作権の概念が生まれて管理されるようになって改善したのでしょう、きっと)

時代背景もあってロシア帝政まっただ中ではありますが、そのおかげでかなり自由に作曲できたのかなとか。宗教曲は一悶着あったようですが、それでもその後のロシアの作曲家に比べれば、ですね。

この時代といえば、いわゆる五人組もいたんですけれど、あまり仲は良くなかったみたい。ブラームスとの絡みもちょっとだけ、これはブラームス側の評伝にもあったなあ。

女性関係もそんなに大変な感じじゃなかった(男性関係には悩んでいたようですが)し、ある意味全うな人生を送ってるほうではないかと思った次第です。それはどうなの?っていう作曲家多いから・・・

筆まめな人だったようで大量の手紙が残ってるわけですが、本人が危惧していたように後世の人に全部読まれてしまって、こうやって本になったりしていて、有名になるのもほんとに大変だわ。

私自身が演奏した当時はあまり考えてなかったけれど悲愴はほんとに死ぬ間際だったのですね。死も突然ですけれど。そして突然すぎていろんな疑惑が生まれたようですけれど。

なんと肉声残ってるんですよね。Wikipediaから聞けます↓
ピョートル・チャイコフスキー – Wikipedia


いろんな作曲家の評伝を読んでいると、時代的な横のつながりが結構面白くなってきて、じゃあみんなどのくらい同じ時代を生きてるんだろうって、思わず自分で表を作ってしまった。

ここ最近の自分の音楽活動に関係しそうな作曲家が主ですが。で、ここに弾いた曲をプロットしていくと、また違った視点で面白いかもねと思ったり。

それはさておき、少しはチャイコフスキーの音楽に近づけたかな、どうかな。近づけていたらいいな。練習もしなくちゃですが、ね。

「戦争と交渉の経済学」を読みました

話題になっているようでしたし、なんとなくタイムリーな気がしたので、と思って手に取ったら結構長かったし、読んでるうちにタイムリーかなと思っていた時期をこえて、ドンピシャな出来事も起こってしまって、それはそれでなんといいますか・・・

さて、現在進行形の事象について私が言えることは何もないですけれど、帯に書いてある「平和とは、敵同士が損得勘定で戦争を避けることにほかならない」というのは実際に読んでみて、なるほどなと。

どこにだって銀の弾丸はないですし、必勝パターンとか絶対うまくいくベストプラクティスなんて存在しないのにね、なぜかそれを妄想しちゃうんですよね。

物事はすぐには改善しないけれど、一歩ずつ、半歩ずつ進んでいても遅いから失敗っていわれたり、世の中なかなかうまくいかないものです。

自分は島国の片隅でかたかたとキーボードをたたくだけの人間ですけれど、世の中の見方がちょっとだけ変わったかもな、と思った一冊でした。

ちなみに、紛争の話もたくさん出てくるんですが、ちょっと前に途中まで読んでた「紛争でしたら八田まで」が前提知識として役に立つこともあったので、これはこれでちゃんと全部読んだらこれまた世界の見方が変わるかもと思った今日この頃。

本自体は結構分厚い(90ページくらいの参考文献ページがある、といっても本文450ページなのでなかなか)けれど、そして少しずつ読んでたので序盤の話はかなり抜けているけれど、一つの見方として読んでみるといいかもしれないですね。

「ロミオとジュリエット」を読みました

次のオケ本番に向けて、いろいろ積ん読がたまってきたんですが、そういや、まずこれを読むべきでしょ、って思い立ったので。

ありますよね。ストーリーなんとなく知ってるけど、ちゃんと原作読んだことない話。これも原語ではないので、原作といっていいかどうかはわからないですけれど・・・

本筋とは関係ない印象として、原語がそうなっているのか、訳でこうなったのかはわからないですが、なんか「下ネタ」っぽいの多すぎ(笑。これが韻を踏んでていい感じの詩なのかもしれないですがにしても「下ネタ」混じりじゃないと会話できひんの?って思ってしまった。

そもそも、片思いの恋煩いで苦しんでるところからのスタートなのに、その日行われたパーティに忍び込んだらジュリエットに一目ぼれして、その夜のうちに婚約、っておいおい。

で、次のこっそり結婚して、帰り道にケンカで人(ジュリエットの従兄弟)を殺して、殺人罪で追放。。。

あれよあれよと、日曜にはじまった物語が、二人の死を迎えるのが木曜日。両家が仲直りした終幕としては金曜になってましたが、これ1週間以内の出来事なのか〜情報量多いなあ

と、令和の自分感覚で読むと突っ込みどころ多いですが、なるほどこれが長年いろんな題材に形を変えて語り継がれてきた物語なのかと。

今回演奏するのは、プロコのバレエじゃなくて、チャイコの幻想序曲のほうですが、そんな情景を頭に浮かべながら弾けたらいいですね。

そうそう、個人的に一番びっくりしたのが、ジュリエットの母親が14歳になるジュリエットに「おまえの年頃にはおまえを生んでました」といって結婚をすすめるシーン。まじか。時代もあるけれど、そんなにはやいですか、そうですか、とね。

そんなに長い話でもないので、自分も通勤中とか移動中にあっという間に読んでしまいましたし、一度読んでみるといいかもですね。